色に色調があるように、音にも音調がある。「音色=ねいろ」と言ってもいい。
音色という言葉で、私が思い出すのは、豆腐を売り歩くときに外の道路から聞こえてくる笛の音である。特に夕暮れの頃聞こえてくる豆腐売りの笛の音ほど淋しく、また哀しく響く音は外にあまりない。子供の頃から私の耳にあの哀しそうに響く音は未だに変わらない。理由はよくわからない。路地を歩きながらの豆腐売りが何時頃始まったのかも分からないし、豆腐売りのあの笛は何時誰が使い出したのだかはなおさら不明だ。ただ私にとって肝心なのは、何故あのような哀しい音になったのだろうか、ということである。それとも私だけがあの笛の音にそのような感情を抱いてしまうのだろうか。
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