白州正子さんに「かくれ里」(1971 新潮社)という著書がある。名著だと思う。奈良、京都、近江などを中心に地方にまで足を運び、誰でも名を挙げることのできる著名な場所ではなく、名刹と呼ばれる大きな寺社でもなく、それらの存在に隠れて、ひっそりと佇むように横たわる小さな里があり、そこには無名だが品格があり、自然の美しさと流れ来たった歴史を背負った寺や社が、時の風雪に耐えて今でも静かに生き続け、日本の古くからの信仰を引き継いでいる里がある。そういった一種秘密な場所が「かくれ里」と呼ばれている。それは、自然景観から言っても奥深い感じがあり、世間の娑婆の騒々しさからも逃れた場所であり、まさに「かくれ里」という名にふさわしい場所である、と言っていいだろう。
Read More →